後悔はいつも隣に2 | ナノ

後悔はいつも隣に2












「私は私にしか、貴方は貴方にしか分からないでしょう?」
「なら、寂しいって何だ?」


 ああ、しまったと私は頭を抱えた。面倒な類を私は引き当ててしまったようだ。


「それは生きていく中で知るもの。一生の内で知れない者もいるし、知る者もいます」


 答えてから、ふと思った。


「貴方は、どちらでしょうね」
「…お前は、知っているのか」
「さあ、どうでしょうね?」


 ニコリと笑って答える。真面目に答える気なんて更々ない。


「でも、貴方よりは知っていると思いますよ。きっとね」


 今度こそ、と踵を返そうとする。と次は腕を掴まれて行き損ねた。何ですか、と言いかける前に男の胸に引き寄せられる。疑問に思って顔を上げると、切れ長の目が私を射抜いていた。


「お前といたら、分かるのか」


 すぅ…と目を細めて男を見やる。


「それは貴方の問題でしょう。私を巻き込まないで」


 腕を振り切ろうとするが、男の力は存外強かったらしくビクともしない。むしろ逞しい腕に余計力が込められた。それは痛くは決して無く、だけれど逃れられない力の加減。


「…俺を、傍に置いてくれないか」


 早々に抵抗を諦めた私は鬱陶しげに男を見る。するとそこには、先程まで一切の感情が無かったはずが、切なそうに懇願した表情があった。ああ、もう。私はどうしてこう、押しに弱いのだろうか。私が溜息をつくと、男の腕がビクリと震えた。


「―――好きにすれば」


 喜色が顔に広がるのを見届けて、気づかれないように溜息をもう一度吐いた。
 そうして、私には忠誠を勝手に誓う男が常に隣にいるようになった。男に告白をすっ飛ばしたプロポーズされて、意識を失いそうになるのは、まだ先の事。


end


ワンコ×読めない人



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