現実逃避希望 「…委員長?」 「どうかした?」 俺は頬を引き攣らせながら目の前で微笑する委員長を見る。見た感じだけ優しげなその笑みの裏に何を考えているのかサッパリ分からない。 分からないのだけど、俺は一つだけ理解した。俺は現在進行系でピンチだと。 「その手に持ってる縄は何デスカ?」 「これ?これはね…ふふ」 何その含み笑い。怖いんですケド。逃げようにも押し倒されている為逃げられない。最近こんなんばっかな気がするんだけど絶対気のせいじゃないよね! 涙目になりながら委員長を見上げて即後悔した。委員長なのにその色気は何!? 「僕さ存在感薄い気がするんだよね」 「………」 えっと、それは否定出来ないかな。別に委員長のキャラが薄い訳じゃなくて、周りが濃すぎてかき消されるだけだと思う。十二分に委員長も変だしね。でもそれと今の状況って関係ないじゃん! 「それに坂井もなんだかんだいって流されてるでしょう?」 「不可抗力!」 「キスとかされすぎじゃないの?僕は我慢してるっていうのにさ」 「人の話聞いて!?」 毎回頑張って抵抗してるんだぞ?でもアイツら小賢しいから結局色んなものを奪ってくるんだって。…って委員長、さり気無く手を縛るのやめてくれませんかね。心底危機を感じてます。 「突っ込まれてないから許すけど。でも納得出来ないんだよ」 「聞きたいくはないけど、何が?」 「キスしてないこと」 あのさ、キスしないのが普通だからな?こんな平凡男子捕まえて何しようって言うのさ。言ったら言ったで「ナニ」って返されるのがオチだろうけどさ! パニックを起こしている俺に、委員長は奇麗に笑った。この状況とは似合わなさすぎるそれが逆に恐怖を煽る。委員長は明白に怯える俺を宥めるように髪に口付けを落とした。 「大丈夫、犯す訳じゃないから。初めてが強姦なのは嫌だし」 まあ一生心に刻めるならそれでも良いけど。と続ける委員長に青ざめる。一体どこが大丈夫なのか是非とも教えて欲しい。流石副会長の弟。中々に狂っている。 副会長は生命の危機を感じるけど委員長は貞操の危機を人一倍感じる。俺、強姦なんて言葉自分に降りかかるなんて考えたことなかったよ! ←|戻|→ . |