欠落人間3 「俺の出生」 「!」 「知らないだろう?」 陣の出生だけはどれだけ探っても片鱗さえ見つからなかった。 「俺は親に捨てられた。"気持ち悪い"んだと」 くっと喉の奥で笑った陣。これは聞いて良い事なのだろうか。いや、しかし聞くべきだろう。恐らく彼が初めて他人に話すことだから。 「泣きも喚きもしない。表情筋も動かない。そりゃあ誰だって気持ち悪いだろうよ」 気持ち悪くなんてない。そう言うのは偽善な気がした。 「物心ついた頃から、目を合わす人間に会った事がない」 それに僕も不可解だと思うから。だけど。 「だから唯一目を見て話すお前を尊敬しているし、憧れてもいる。愛しく、思う」 そっと自ら陣の頬に手を滑らせる。目線を交えて微笑んでみせた。 貴方が望むなら幾らでも見てあげよう。貴方が望むなら幾らでも微笑もう。貴方が望むなら――― 「幾らでも愛してあげるよ」 その代わり僕も愛して。等価交換が一番だから。 そう言った僕をやんわりと抱き締める前に見えた陣は泣きそうだった。顔を歪めて嬉しそうに破顔していた。ああ、これが彼の心だろう。 (大丈夫、僕が貴方を) ―――人間であると証明してみせましょう end ←|戻|後書き . |