冬を愛し、 ふわりと、冷たい風が髪を弄る。 冬は好きだ。朝にキンと張り詰めたあの空気が。確かに、起き上がるのを渋りたくなるのだけれど清廉されたあの空気がどうしても好きで。 僕は午前五時に起きて家を出る。20分程歩いたら、海が静かに眠っているのが見える。白い砂浜に腰を下ろして、待つ。ひたすら、待つのだ。そうして、明ける。 「―――…」 一筋の光が差した。と思うと段々その光は広がり、海を、空を、白浜を、僕を、照らし始める。柔らかく、だけど強さを持つオレンジ色の光が。雲があるときは、雲に色が映り込み鮮やかに色を持つ。今のように雲一つない空は、青からオレンジへと変わるそのグラデーションがとても美しい。 日々変わる空を映す鏡は喜び、踊る。写真には決して写ることのない、感じることのないこの感動への鳥肌が。いつ見ても美しく、いつ見ても決して同じものはないこの光景が。同じではないからこその儚さと強さが。とてもとても僕は好きなのである。 それから、それから。 「―――風邪ひくぞ、冬姫(ふゆき)」 生涯を捧げると誓い、誓ってくれた、彼を。 「愛してます」 「知ってる」 end 「冬を愛し、貴方を愛し」 ←|戻|→ . |