食事のマナーは守りましょう3 「―――何をしている」 「!(メシアがいらっしゃったっ)」 生徒会会長様である。唯は朱鷺から逃れられると諸手を挙げて喜んだ。朱鷺と唯の様子を見比べて、臣はその秀麗な顔を顰める。 「見て分からないか?イチャイチャするのを邪魔するような無粋な真似をするな」 「ほう、無粋な真似か」 目を眇める臣に唯は青くなる。口元は笑みの形をかろうじで保っているが、目が笑っていない。ギラギラした瞳を見てしまった唯はサっと目を逸らした。 そんな臣に対して朱鷺はというと、心底楽しいといった風に笑っていた。流石は風紀のTOPといったところか。 「唯は同意していないみたいだが?」 「え?あ、はい」 急に話を振られた唯はキョトンとしながら素直に頷いた。だがそれによって朱鷺の機嫌が損なわれる。先程までの余裕のある笑みは消え、臣を睨みつけた。凄まじい威圧感に「ひっ!」と唯は小さく悲鳴を漏らしてしまう。 「わ、!」 臣に腕を引かれた唯は必然的に席から立ち上がり、臣の胸の中へとダイブすることになる。厚い胸板に包まれ、腰に回された腕によってガッチリと固定された。 「お、臣先輩?」 臣は自分の腕の仲でモゾモゾと体を居心地悪そうに動かす後輩に甘く笑いかけた。その途端唯はボッと顔を赤く染め上げる。唯の赤い頬に手を添えて笑う。 「林檎みてぇ」 「誰のせいですか〜」 唯はペシリと臣の手を叩き落とした。 「っ!?」 そして再び横から腕を引っ張られてボスリ、とまた違う胸板に迎え入れられる。臣の爽やかな香りではなく、朱鷺の甘く胸焼けするような香りに唯は酔いそうになる。 「お前はコッチだろう」 (いや、ソッチもコッチも無いんですけど) 心の中でつっこんでみる。口に出したらそれはそれで余計に話が拗れると思ったからだ。小さく溜息をつきながら大人しく朱鷺に抱きこまれておく。 なんだかな、と呟くがどうしようもないこの状況では意味を成さない。頭上で口論をする二人を横目にどうして此処に来たのか、と思い返す。 (ご飯食べに来たんでしたっけ) まぁ食堂にいるのだからそれ以外に理由は無いのだけれど。唯は食べ差しのピラフを見て遠い目をする。元々お腹が空いているわけではなかったが、もう冷めてしまっているだろうピラフに申し訳なくなって、心の中で作ってくれたシェフに謝罪した。 いつ終わるのだろうか、とまた息を吐いたが恐らくまだ続くのだろうなと、ゆるりと目を伏せるのであった。 end. ←|戻|→ . |