食事のマナーは守りましょう 「―――口開けろよ」 唯は固まる。朱鷺は心底楽しげに笑っている。周りは二人の様子を珍獣を見たような目で見つめる。 一体この状況は、何? ことの始まりは、唯が昼休みに書類を提出しようと風紀委員室に向かったことから起こる。 「失礼しまぁす」 緩い喋り方で室内に入る。中には風紀委員長である朱鷺だけで、他の風紀委員はいないようだ。唯は肩の力を抜く。 「書類です」 朱鷺だけであることに安心し、とりあえずは表情を素に戻す。唯から書類を受け取った朱鷺は、僅かに目を細めた。 先日に注意したはずの体調管理。唯の顔色を見ると出来ていないのは一目瞭然であった。他人には分かりにくいが近しい者ならば唯が今にも倒れそうなのがよく分かる。睡眠をとっていないか、食事をとっていないか。どちらかだろう。 (いや、どちらも…か) 「氷室」 「何でしょうか」 カタリ、と持っていたペンを机に置く。訝しげに見てくる唯の瞳を真っ直ぐに見つめた。 「俺が今からする質問に正直に答えろ」 「は?」 「正直に、だ。いいな?」 「は、はい」 珍しく威圧してくる朱鷺に思わず頷く。しかしすぐに後悔することとなる。 「今日は何時間寝た?」 「え、っと」 質問の内容に冷や汗を流す。朱鷺の目が据わっていることに、ようやく気づいた。 ←|戻|→ . |