感謝 平和 | ナノ

感謝 平和を望む












 俺がこうして成り立っている理由は何だろうか、だなんて考えてみる。最近、新たに知り合った人も増えて、中々大変でもあるがそれと同時に刺激もあって日常が楽しい。些細な変化だが俺にとっては大きな変化だ。
 彼らがいて、初めて成り立つものがそこにはあった。親友である厳がいて、案外心配性な立花先生がいて、俺の事を思って泣いてくれる森永先生がいて、激昂してくれる姉の真那と幼馴染の和子がいて、それから。


「…雷先輩」
「なんだ」


 甘い優しい声音が鼓膜を震わせる。俺は知っている。この声が聞くことができるのは、俺だけだってこと。俺だけが聞ける特権は、誰にも譲れない。
 それから、甘い蕩けたようなその表情もまた、俺のものであることも。


「…ずっと、いてくれますか?」


 目的語はあえて言わなかったのだけれど、雷先輩は潔く理解したようで目を細めた。愛されていると分かるその眼差しを見つめる。


「お前が望むなら」


 そう言って雷先輩は、目を合わせたまま俺の手の甲にキスしてみせた。ニヤリと笑うその顔が一番似合っていて。俺は気障な仕草に少し顔を赤くしながら聞く。


「…俺だけなんですか?」


 何が、とは言わなかったけれど聡い彼は俺の意図を理解して笑った。その瞳に悪戯を企んだような表情の俺が映っている。


「分かっているだろう?」
「たまにはちゃんと聞きたい時もあるんですって」


 珍しく強請る俺を見て、雷先輩は口角を上げた。そして次の瞬間真剣な表情になった。


「お前が嫌だと言っても離しはしない。俺が生涯愛するのは怜那だけだ。お前に誓う」


 あまりにもストレートなその物言いに、俺は頬を染めた。だけどそれすらも気にせずに愛しい人の胸の中へと飛び込んだ。やはり、明確に言ってもらえると嬉しいものだ。分かりにくい彼だから余計に。


「…俺も」
「お前も言え」


 雷先輩の言葉に驚いて目を見張る。普段ならそんなこと言わないのに。甘えてくれているのだろうか。俺と同じ気持ちなのだろうか。そう思うと嬉しくて、自然と頬が緩んだ。


「俺も生涯愛するのは雷先輩…いや、雷だけですよ。雷に誓います」


 顔を見合わせて、どちらからともなく唇を重ねた。


「結婚するみたいですね」
「それもいいだろう」


 クスクスと笑いあう。こんなに幸せなのは、やはり彼がいるからで。ありがとう、ありがとう。彼も分かっているだろうから言わないけれど。


―――この気持ちは届いていますか?


end.


雷×怜那(恋人設定)



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