兄の心境 | ナノ

兄の心境












 宮緒は新と出会ってから感情が多少豊かになった。クラスメイトもそれを感じていたし、そして。


「みゃお、最近何かあったか?」


 宮緒の兄もまた、それを感じていた。宮緒はパチクリと瞬きをして自身の兄―李緒(りお)を見上げた。李緒は宮緒とは全く似ていなく、しかもかなりの男前だ。新と負けずとも劣らずなほどに。そして難点が一つ…李緒はかなりのブラコンであった。


「ん」


 李緒の言葉に少々考え込む宮緒。李緒にとって、宮緒が感情を表に出すことには賛成だ。むしろ反対するわけがない。しかし、その切欠となった<何か>が気になって仕方が無い。


「新に、会った」
「アラタ?って誰だ、男じゃないよな」
「男だよ?」


 宮緒の無表情の中に何が宿っているのか、もう十数年の付き合いになる兄には分かった。分かって、しまった。


―――その新とかいう奴に惚れたか。


 愛しい愛しい弟の心を奪ったその「アラタ」という奴を憎く思う。が、それと同時に期待もしている自分に李緒は息を吐いた。


―――俺は複雑だ、弟よ。


 危害を加えないならば一応良しとしよう、と李緒は決心するが、同時に会ったら一度は殴らないと気が済まない、と殴る決心も固めていた。数日後、宮緒に家に誘われた新が訳も分からぬまま殴られるまでもう少し。


end.


10000hit三毛猫様キリリク
黒猫 兄目線寄り



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