俺を見ろ | ナノ

俺を見ろ












 厳は偶然見てしまった。怜那が街で美女と手を繋いで歩いているところを。


「怜那…?」


 人知れず男の低い声で呟いた。顔つきは秀麗なままであったが、男のソレになっていたのは本人は知らない。


「―――ただいま」
「怜那」
「?」

 いつもなら「お帰り」と笑顔で迎えてくれるはずの恋人に首を傾げる。しかも声は低く不機嫌そうな顔を、怜那は不思議そうに見やる。


「どうかしたか?」
「…だ」
「え?」


 完璧に男モードの、それも野獣モードの厳に怜那は目を瞠る。


「…あの女、誰だ」
「あの女?」
「手を繋いで歩いていただろ」


 怜那は厳の言葉にキョトリとするが、すぐに思い至った。相変わらず鋭い目つきで見てくる厳に苦笑する。


「あれは俺の姉だよ」
「…あ、ね?」
「ああ。似てないけどなー」
「そ、うか」


 あっけらかんと言い切る怜那に嘘が無いことに納得して厳はホっと息を吐く。そんな厳を見て怜那は意地悪く笑う。


「何?嫉妬でもした?」
「…したら悪いか」


 即答、とまでは言わないが、厳は真っ直ぐ怜那を見て言い放った。まさか素直に言われるとは思っていなかった怜那は直球すぎるその返答に顔を朱に染め上げた。


「いや、嬉しい」


 赤い顔で、それでも可愛らしくはにかむ愛しい恋人に理性が切れたのは、仕方が無い。それを未だに赤い顔で受け止める怜那に理性が持つ訳がないのだ。厳は恋人の唇に獣のごとく、噛み付いた。


end.


7400hit流れ様キリリク
厳×怜那 厳(男モード)嫉妬→甘
*恋人設定



←||→

.