初挑戦 | ナノ

初挑戦












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小夏様キリリク
厳×怜那(ラブラブ)





 今日は日曜日。怜那は今エプロンをしてレシピを睨んでいる。


「んー」


 レシピを見ながら片手でボウルを持ち、泡立て器で混ぜ始めた。怜那は生まれて初めてのプリン作りに挑戦していた。
 何が切欠でこうなったかというと、昨日厳と怜那が一緒にテレビを見ていたことから始まる。その日たまたま見ていたのがグルメ番組で、それにプリンが出てきたときに厳がポツリと呟いたのだ。
 『プリン食べたい』と。そこから、怜那は作ってみようかと試みている。怜那は料理は出来るのだが、お菓子系統は作ったことがない。まぁ、なんというか甘いものが苦手だったりするからなのだが。よって現在初挑戦中で、悪戦苦闘中なのである。
 ちなみに厳は外出中だ。怜那はあえて厳がいない時間に作っている。


(だって失敗したら嫌だし)


 怜那がちらりと時計を見る。針は14時を過ぎたところだ。厳は17時くらいに帰ってくるらしい。


「…こんな、もんかな」


 あらかじめカラメルを容器の底に流し込み冷やしていたものの上から生地を流し込んだ。優しい色のそれに怜那は満足し、再び冷蔵庫へと戻す。後片付けも終わっているので、ソファでふぅ、と一息つく。時計を見て後30分か、と考えながら厳が帰ってくるのを待った。


「ただいまぁ」
「!」


 ドアが開く音と共に厳の声が聞こえ、怜那は玄関へと小走りで向かった。


「おかえり」
「ただいまぁ怜ちゃん」


 にこりと笑んで迎えてくれた怜那に、厳は極上の笑みを返した。内心で厳が「新婚さんみたい!」と悶えているのを怜那は知らない。


「あ、のさ」


 珍しく口篭る怜那に厳は首を傾げる。


「どうかしたの?」
「あのさ!プリンを作ってみたんだけど…」


 最初は大きかったのに、段々と声がしぼんでいく。


「作ってくれたの!?」
「えっと、うん」
「嬉しい!!」


 俯く怜那に厳は抱きついた。久しぶりのスキンシップに厳はうっとりしながらギュウギュウと抱きしめる。


「食べる!」
「え、今?」
「もちろん!怜ちゃんが一生懸命作ってくれたんだものっ」


 自棄に意気込む厳に怜那は嬉しそうに微笑んだ。


◇◇◇


「美味しい!」
「本当か?」


 厳の反応にホっと息をつく。


「本当!」
「一口頂戴」


 怜那の発言に一瞬厳は止まったものの、すぐにプリンを乗せたスプーンを差し出した。それを躊躇うことなく口に含む。


「ん、美味いな」


 ペロリと怜那は自分の唇を舐めた。その妖艶さに厳は顔を赤くする。


「顔赤いぞ?」
「な、なんでもない!」


 わたわたと手を振る厳に不思議そうに首を傾げた。しかしそれ以上は深追いせず、「ふぅん」と言い終わらせたことに厳はホっと息を漏らした。その後も幸せそうに食べる厳に顔を綻ばせた怜那は「また作ろう」と決心したのだった。


end.



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