A触れた指先にうずく熱1 恭徳と大也の出会い。それは成績を危惧した母が家庭教師を雇った事から始まった。 不本意ながらも勉強を教えてもらって早二ヶ月が経ったある日。いつも通り大也に見守られ教えられながら数学の問題を夢中になって解いていた恭徳は、大也がいなくなった事に気付かなかった。 「―――恭徳」 大也はドアを開けたその先で丸まった背中に声を掛けた。しかし熱中しているのか気づかない。大也は悪戯を思いついたように口角を上げ、恭徳に近づき耳元で再び名前を呼んだ。意図的に甘い声を出して。 「…やすのり」 「ぅお!?」 すると面白いくらいに肩を揺らした恭徳は耳を押さえて振り返った。 「色気無いな」 「男に色気とかキモいだろ!てか耳はやめろっ」 「んー?耳が弱いのか」 頬を赤くしながらも明白に「しまった」という顔をする恭徳。その正直な反応に大也は笑いながら本来の目的である手に持っていたマグカップを差し出した。恭徳は訝しげにマグカップと大也を見比べる。 ←|戻|→ . |