人に恋した人食い鬼8 「謝辞は要らないってさ」 「…どうしてだ?」 「面白いものを見せてもらったし、新しい伝説を作ってくれたから、って」 「そうか。長様らしい」 長様はお茶目な御方だ。そう仰いながら酒を煽る様子が目に浮かぶ。何もかもが上手く行き過ぎている気がするが、親切に甘えさせてもらおう。 折角手に入れた幸せだ。人間の身ならば世間から厭われる事も、私のせいで陰口を叩かれる事も無いだろう。ただ、先に確認したい。 「御前は、良いのか。私は種族故ではあるが多くの人間を殺してきた。そんな化物と一緒に居れるのか。愛せるのか」 「見縊(みくび)らないで欲しいな。全て承知の上で愛しているんだ。僕が愛するのは君だけだ」 即答された言葉に心底ホッとした。私は、対等な立場でこの男を愛せる。 ←|戻|→ . |