人に恋した人食い鬼4 | ナノ

人に恋した人食い鬼5












 ふと唐突に思い出した。高位の妖は生を分かつ事が出来た筈。生憎、私は低位とまではいかないが中位だ。
 でも長く生きてきた分、魔力の蓄えは通常の中位妖より多い。もしかすると、何とかなるかもしれない。ほとんど、と言って良い程、生を分かつと高確率で命を落とす事になるだろうが。
 私は男を見る。静かに笑んでいるのを見て、覚悟を決めた。


「―――私は、独りで千年という月日を過ごしてきた」
「………?」
「生きる為に、人間を食べる。当たり前だった。しかし私は、御前を好いてしまった」


 私の一世一大の告白に、男は目を大きくさせる。知らなかったのだろうか。自分としては物凄くわかりやすかったと思っていたのだが。


「愛というものを知った。それだけで、生きてきた価値が見い出せた。…御前には感謝している」
「待って、それじゃあまるで」
「私は御前に生きて欲しい」


 物言いに違和感を覚えたのか、男が口を開く。だが続きは言わせない。声を被せて遮る。
 そして心の中で禁術を唱えた。体が浮くような感覚と同時に、自分の魔力が急速に消耗していくのを感じた。


「有難う」


 言いたいのは、たったそれだけ。何が何だか理解していない男の戸惑いと焦りと恐れに染まった顔を最後に、視界は暗転した。



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