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 ふわり、ふわり。少年が歩く姿を形容するなら、この擬音語が一番合っているだろう。色素が薄いのか、人工色ではない美しい茶髪が歩く動作に寄り添って動く。童顔で中性的な…いや、正直言うと美少女フェイスである彼は、口元を緩めて微笑んだ。


(今日のお菓子はショートケーキ♪)


 まるで花開くようなその表情を浮かべる少年の名前は羽咲天乃(うさきあまの)。天乃の通称「天使の微笑」を目撃した通りすがりの生徒達は各々にほぅ…と感嘆の息を漏らす。天乃が考えているのが食欲であることなど、知らぬが仏である。
 美形が多いこの学園でも他に引けをとらないトップクラスの容貌は見る者をものの見事に魅了していく。


「―――羽咲隊長っ」


 声変わりを思わせないボーイソプラノが彼を呼び止めた。くるりと振り向いたと同時にブラウンの髪が柔らかく揺れる。声の主である三宅志応(みやけしお)は一瞬だけ彼に見惚れた。しかしすぐに思考回路を巡らせて天乃のもとへと駆け寄った。

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