突然な出来事に天乃は困惑していた。天乃もかなりのマイペースだが、秀慈も大概である。普段は常識人であるのだが、時折垣間見せる彼の行動は周りにいる者を動揺させる。
いつもとのギャップもあってか、振り回す時はここぞとばかりに振り回すのだから困ったものである。秀慈のマイペースっぷりを初めて見た天乃は、子ども抱っこされながら最初は戸惑っていたが段々と慣れてきたのか大人しく首に手を回した。
ゆらゆらと揺られて十数分。心地よくうつらうつらしていた天乃は揺れが止まったことに顔を上げる。
「ようこそ、生徒会室へ」
ガチャリと音を立てて開けたドアの先にはきらびやかな室内があった。
「どこ行ってたんです…ん?」
目を吊り上げた美人が秀慈に駆け寄ってきた。
「うさぎ姫じゃないですか。拉致してきたんですか?」
「お前な…」
酷い物言いをする副会長、新條美麗(しんじょうみれい)に呆れた声を出す。じろじろと見つめられて居心地の悪さに天乃は身動ぎした。
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