「―――あ、会長様だぁ」
とある日、天乃は持参の弁当を持って裏庭に来ていた。彼が隊長に就任する前までは専ら制裁現場であったのだが、今ではすっかり自然の音しか聞こえない。
実を言うと、生徒会会長親衛隊隊長親衛隊、通称「小動物愛護会」の隊員であるチワワやゴツい生徒達が、天乃が裏庭へとよく訪れる為に見回りをして制裁をなくしてきたのだった。
偶々木の根元に寝転がっている会長、一宮秀慈(いちのみやしゅうじ)を見つけた天乃はパァッと目を輝かせて近寄った。
「おおかみさんお昼寝中ー」
ちょこん、と秀慈の頭の横に座ったが一向に起きそうにない。天乃はそろそろと秀慈の艶やかな黒髪に手を伸ばした。予想通りサラサラと指から滑り落ちる感触に、天乃は人知れず頬を緩めた。
そうして暫くの間髪を弄っていた天乃だったが熟睡している秀慈につられたのか小さく欠伸を漏らし、トロンとした目で周りを見渡した。誰もいないことを確認して秀慈の横に寝転んだ。
肌寒さに小さく震えた天乃は温もりを求めて大きな体にピトリと引っ付く。強張っていた肩の力を抜いて漸く規則正しい寝息が聞こえてきた。
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