「どうした?」
「…にゃー(別に)」
「…そうか」
都の言葉が分かるわけではないが、峰はなんとなく感じ取った。
「お前、賢いんだな」
「んにゃ」
そんな訳ない、と都はペシペシと峰の腕を叩く。
「名前はあるのか?」
無理やり話題を転換されたような気がしないでもない。都は少しだけムッとする。
「にゃー」
「…にゃー?」
「にゃー!」
「分かんねぇ」
自分の名前は都だと言ってみるが、やはり伝わらない。ムム、と都は考え込む。ふと思いついて峰を手の中から抜け出した。そのまま峰のズボンのポケットに入っているものを取り出す。
「あ?」
「にゃ」
「…携帯?」
「んにゃ」
峰の言葉に頷いてから都は携帯を器用に開いた。メモ帳を取り出して、キーを打つ。やはり猫のままでは打ちにくい。何度もクリアキーを押して打ち直せば。
“都 みやこ”
「…にゃー!(出来たー!)」
ようやく打てた文字を見て嬉々と尻尾を揺らす。都は早速峰に見えるよう携帯を反転し押し出した。
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