08



「状況…猫は僕で、僕の名前は仁科都だよ」
「分からねぇ」
「僕もよく分かってないんだよねぇ」


 都は尻尾を揺らしながら猫耳を触る。


「とにかく有村」
「…峰でいい」
「じゃあ峰、僕を置いてくれないかな?流石にこの格好じゃ出られない」
「…別にいいが」
「ほんと?やったー」


 ニッコリと笑う都は可愛い。とてつもなく可愛らしいが、いいのかそれで。


「鼻キスでこれって、口なら完全体とかなのかな」
「するか?」
「え、出来るのか。ビックリだよ」
「都なら、いい」


 峰は再び僅かに口角を上げた。ポカンと口を開ける都を見下ろす。


「僕ならいい、って…」
「…そのままの意味だ」
「好きでもないのに?」
「好きだと言ったら、どうする?」


 爆弾を落とす峰。呆然と見上げる都。


(物語はまだ始まったばかり)

end.

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