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 クラスメイトの宮緒への見解は一致している。「子猫」だそうだ。
 宮緒は常に机にうつ伏せになりながら丸まって寝ている。それほど身長が高くはない宮緒は、つり目がちなのも手伝って「子猫」に見えるのだ。気がつけばフラっといなくなるし、気まぐれでマイペースだ。と思ったら別に薄情なわけでもなく挨拶をすれば返してくれる。
 常に無表情で何を考えているのか分からないがどことなく仕草が愛らしい。しかし警戒心は強いらしく、寝ていても誰かが近づけばピクリと反応をする。その様子が自棄に野良っぽいため「野良猫」とも呼ばれていたりする。眠る彼に近づかないのはいつしかクラス内の暗黙の了解になっていた。
 いつでもボスを狙えるこの高校では、力の差が歴然としていない限り、基本的にクラスは殺伐としている。だがクラスメイトのカラフル頭の不良たちは、穏やかな目で宮緒を見守っているため、比較的1年A組は大人しいものであった。
 それは確かに宮緒のおかげ、ではあるが宮緒自体はただ、安眠とそれから平和な日常さえあれば、他にあまり興味はないのだ。
いつしか、宮緒はクラス内の愛されるべき者として扱われるようになった(愛されるべき者、というよりは愛玩ペット、に近いのかもしれないが)。だけれど決して彼を遠ざけるでもなく、程よい距離を保つ彼らに、宮緒は気にかけるのでもなく淡々とした毎日を送っていた。
 しかし、それは呆気なく壊された。一人の男によって。

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