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「新?」


 キョトンと宮緒は新を見上げた。苦しくはないが、その行動の意図が分からずもそりと体を捩る。だがますます強くなる腕の力に困り果てた。
 嫌ではない。嫌ならこの腕から抜け出す方法など幾つも知っている。だけどそれをしないのは、その腕の中が心地良いからで。離れるのには惜しいと思う自分に、宮緒は思考の端で気づいていた。触れ合っているところからじわりと体温が馴染む。
 ポカポカと、体だけではなく心も温まるような気がして、余計に離れたくなくなった。それは、宮緒だけではなく新も同じで。


「…離したくねぇ」


 ポツリと新は呟いた。呟きを拾った宮緒は同意するように、新の広く厚い胸板に頬をすり寄せた。


「離さないで」


 縋るような声を出した宮緒に新は驚きに目を瞠る。しかしすぐに笑みを浮かべ、言う。


「…ああ、離さない」


 「離せない」のかもしれない、と心中で笑った。青空の下で、二人の影がひたすら重なっていた。


end.

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