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 もちろん、常識人である新は、男同士であることに酷く悩んだ。だが持ち前のサッパリした性格で「好きなものは仕方が無い」とスッパリ結論を出した。悩みも宮緒の前では脆く崩れ去ったのだ。
 そうして案外スッキリした面持ちで宮緒に会いに行ったのだが。惚れた弱みというかなんというのか、フィルターがかかっているというのは自身でも分かっているつもりなのだが、あまりにも宮緒が可愛らしくて理性が切れたのだ。
 理性が切れたにしては触れるだけの口付けではあったが、それでも相手は何も知らない純粋な男で、たった数秒の触れている間に「嫌悪されたら」とか「拒絶されたら」などと考えていた。
 困惑した声音で自分を呼ぶ宮緒に、もしかするとこれから彼に触れることが出来ないと思うと、切ないような、寂しいような、そんな胸を鷲掴みにされるような感覚に陥って、だけれどもいつかはこの甘い温もりから離れなければいけないと思うと、どこか勿体無いような気がしてもう一度だけ触れるだけの口付けを落とした。新は拒絶を覚悟して宮緒の顔色を伺った。
 しかしそこにはただ困惑と驚きに目を瞬くだけの表情があった。つり目がちの大きな瞳は、新が直視するには無垢すぎて気づけば謝っている自分がいた。そんな新に宮緒は「どうして?」と聞き返し、新は更に戸惑った。この少年はキスをした意味に気づいてないのだろうか、と。ただ愕然と宮緒を見つめた。宮緒は首を傾げながらも新を見つめ返す。

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