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「―――…!」


 バタン、と開け放たれた瞬間に風が勢いよく二人を包み込んだ。宮緒は僅かな変化だが目をキラキラさせている。


「空が近い」


 眩しそうに目を細める宮緒を、それこそ新が眩しそうに見つめる。


「屋上好きか?」
「高いところ、好き」


 新の質問に、宮緒は空から新へと目線を戻して。


―――ふにゃり、と笑った。


 それは新にとって衝撃的すぎるほどの、衝撃だった。無表情が標準装備である宮緒だからこそ。その何もかも気を許したような、無防備で無垢な笑顔に新は自分の心臓が大きく脈打つのを感じた。
 そうして、無意識のうちに宮緒の腰に手を回し自分の方へ引き寄せて、自分と宮緒の唇を重ね合わせていた。
 ただ、触れるだけのキス。それなのに甘く蕩けるような感覚に、新は驚きを隠せなかった。近づいてきた新の顔に、反射的に目を閉じていた宮緒は目を見開いた。
 未だ唇は互いに重なり合ったまま、合わさった目線を双方とも外せずにいた。戸惑いも交じっているせいか、宮緒がもぞりと体を動かす。その際に僅かにずれた口を開いて声を発する。

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