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 次の日の朝、宮緒はいつも通り早めに学校に来ていた(と言ってもやはり一時間目は始まってはいるのだが)。いつもと同じようにポテポテと歩き、教室に着くと机にうつ伏せになる。
 そうして二時間目頃にクラスメイトは登校してきた。今日もクラスの癒しである宮緒と挨拶を交わし、満足そうにそれぞれ談笑を始める。例えばそれは高校生らしいくだらない話題であったりもするのだが、耳を澄ませば時々聞こえる不穏な族や不良の物騒なものも存分に含まれていて、やはりこの高校は普通とは違うことを証明していた。
 ほどよくざわつくクラス内に、顔を机にうつ伏せにしたままだった宮緒が不意に止まったざわめきに不思議に思って顔を上げた。周りにいた、親しくないわけでも、特別親しいわけでもないクラスメイトの目に浮かんだ、畏怖と憧憬の混じった色を宮緒は逃さなかった。彼らの一点に集まる視線の先をゆっくりと辿る。するとそこには。


「ぁ」


 昨日の。そう音も無く吐き出された言葉は空気に溶けて消えた。小さな、本当に小さな宮緒の呟きに、教室のドアの近くに立つ彼はすぐにその存在に気づいた。

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