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―――あの後僕は、勝さんから「桜さんが意識を取り戻した」という連絡が入って思わず取り乱してしまったけれど、わたり先輩が傍にいてくれたおかげで自分を取り戻すことが出来た。真に一言連絡を入れて、先輩と病院へと向かう間に最初から全て話したんだけど、話し終わった後に先輩に抱き寄せられて、僕はまたその優しさに泣いてしまった。この人がいたら僕は大丈夫なんだ、とその時心から思った。
 そうして病院に着いて桜さんに会いに行くと、あの時のままの柔らかい微笑みに再び泣いてしまった。嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかった。そんな僕を先輩は同じように抱きしめてくれて、尚更涙は止められなかった。幸せってこういうことを言うのかなぁ、だなんて考えてみる。
 微笑み合う桜さんと勝さんに、それから…愛しい人を見上げる。優しげに細められた瞳に僕もつられて微笑んだ。


「親の分も俺が愛してやる」


 先輩はそう言って僕に口付けた。くすぐったさに身をよじったけれど、それ以上に嬉しくて照れくさくて、僕からもキスをした。
 家に帰れば真が抱きしめてくれた。僕は恵まれているのだと思うと、嬉しくて。涙を流すのは何度目だろうか、なんて考えながら笑う。


「心配してくれてありがとう」

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