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 一つ瞬きをして、カっと身体中の血液が顔に集まったような感覚に陥った。確かに好意を持たれているとは思ってはいたけれど。鈍いだなんて僕自身思っていないし、他者から見てもきっと言われない。
 知っていた。確かに知っていた。けれど僕は男で先輩も男で。常識があるこの目の前の人はきっと、言わないだろうと、言えないだろうと高をくくっていたのに。
 だからこそ僕も想いを秘めて。別れを切り出したはずなのに。どうしてこの人は壁をいとも簡単に壊してしまうのだろう。


「なぁ椿」


 優しく抱きしめられる。強張った身体は此処数日で慣れてしまった安心する香りに身を委ねた。


「俺も戸惑った。好きだと思ったのも初めてだし、ましてや男同士だしな」


 静かに目を閉じて先輩の声を聞く。僕の心拍数はきっと上がっているのだろうけれど、密着した先輩の胸から少し早い鼓動が心地良くて。先輩も緊張しているのかな、と考えると僕は少し落ち着いた。


「俺、多分執着するだろうし。今日だって、椿の友人にさえ嫉妬した」


 苦く笑うのが肩越しに分かる。穏やかな手つきで頭を撫でられて、顔を上げる気にはならなかった。

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