28



 病院を出た後、ふらりと街を歩いていた。ただ何も考えず。いや、ずっと自己嫌悪に陥りながら。


「どうすれば、いいのかなぁ」


 どうしたら、いいのか。ただそれだけを延々と考えた。
 「椿」の花言葉は「理想の愛」。そして裏花言葉は「罪深い」。自分の名前を戒めとして、ずっと生きてゆくのだろうか。そうして独りで。
 ふと気づくと、学校に着いていた。無意識にあの人を求めていることに、苦笑を漏らす。自分から逃げたのに。それでも、欲しいと思ってしまうのか。僕にそんな権利は無いはずなのに。そんなことを思いながらも、足は夜の学校へと踏み出していた。


「寒い、なぁ」


 屋上に吹く風は容赦なく牙を剥く。でも、それが今の僕には心地良くて、安心して。冷えていく身体を感じながら目を閉じた。このまま死ねたらどんなに楽か。ただそれだけを考えて。
 一筋の涙が頬を濡らし、だけど僕は振り切るように拭った。僕に泣く権利なんかなくて。誰かを想う権利すら、僕にはないのだ。わたり先輩と座ったそこに、座り込む。痕跡なんてあるはずもないのに、コンクリートを指でなぞった。

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