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「椿ちゃん来てたんだ」
「あ…勝さん」


 驚いたように目を繰り返し瞬いているのは鈴代勝さん。桜さんの主治医で、そして恋人でもある。流石というべきか、勝さんも桜さんに負けず劣らず優しい人だ。


「椿ちゃんが来てくれて桜も喜んでるよ」
「そうだと、いいんですけどね」


 喜ぶ?そんなわけがない。だって僕のせいで…僕のせいで。


「椿ちゃんが気に病む必要はないんだよ?」
「…帰りますね」
「椿ちゃん」
「じゃあ、」


 あえて勝さんのほうを見ないでドアを閉めた。そのまま病院を出た後空を見上げれば、心と共鳴するように分厚い雲が広がり、辺りは薄暗くなっていた。


(いっそのこと僕のせいだと恨んでくれたら楽なのに)
(そうしたら僕はきっと…)


<願う人のために消えましょうか>

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