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 目が覚めた時、僕は桜さんに抱きしめられていた。鈍く響く痛みの箇所には丁寧に措置されていた。


『ごめんねごめんね、助けられなくてごめんね』


 ひたすら謝り続ける桜さん。そんなの気にしないのに、と言おうと口を開きかけたが切れていたのか鋭い痛みが走って慌てて口を閉じた。狂ったように泣き続ける桜さんに、僕は何も言えなかった。それからだ。桜さんが狂い始めたのは。
 そうして今、自殺未遂のあと、昏々と眠り続けている。


「僕の、せいで」


 桜さんは優しすぎたんだ。それゆえに、僕のせいで壊れた。僕のせいで大切な人が壊れるのなら僕はいらない。


「何も、いらないから」


 必要ならば、僕の命と引き換えにして。
 だから。
 だから…  (帰ってきて)

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テーマ「人外ファンタジー」
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