20
「―――白露か?」
「わたり…先輩」
昨日と変わらない彼。
「今日は最初からサボりか?」
「あれ、もう始まっちゃってた?」
「おう。本鈴聞こえなかったのか?」
「ぼーっとしてましたぁ」
警報は今も鳴り続けている。巻き込めない。巻き込みたくない。
「お前なぁ」
呆れたように笑う先輩。
「今朝は食べたのか」
「…えへー?」
「食べてないのか。まあだろうとは思ったが」
僕が誤魔化すように笑うと先輩は嘆息した。
「これ」
「?何ですかー?」
差し出されたのはコンビニの袋。中を見るとヨーグルトが入っていた。
「ヨーグルト。それくらいなら食べれるだろうかと思ってな」
「ありがとぉ」
「どういたしまして。さっさと食っとけ」
「はぁい」
わたり先輩と一緒に腰を下ろして食べ始めた。
「せんぱーい」
「何だ?」
「先輩は、」
何で僕なんかを構うの?何で僕なんかに優しくするの?
―――僕が、サヨウナラと言ったら…どうしますか?
「…先輩は、ご飯食べたんですかぁ?」
聞きたくて、でも聞けなかった。答えが恐くて聞けなかった。僕は、どう答えてほしいのだろう。引き止めてほしいのだろうか。
「白露?どうした」
「何でもないよお?」
言わないで聞かないで
気づかないで入ってこないで
貴方が汚れてしまう!
穢れてしまう!
「白露?」
「何でもないってぇ」
お願いだから。巻き込みたくないから。
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