『おいっ!』
どっちを取っても駄目なら
『あんた、早く答えなさいよっ!!』
僕はどちらも取らない。
『一人暮らし、するよ』
僕は、上手く笑えているのだろうか。
迷惑をかけないようにと努力してきた勉強も。
疎まれないようにとしてきた作り笑いも、愛想も。
全て、全て無駄だったのだと気づいた。
そのときにはもう遅くて、もう全てが終わっていて。
声は震えていなかっただろうか。
どうやったら、どうしていたら良かったの?どうしていたら、正解だったの…?
気がついたら一人、新しい家となるこのマンションの前で立ち尽くしていた。
頭に浮かぶのは、いつだったか呟いた母親の言葉。また今よりも随分マシだった頃の、呟き。
『―――愛って何かしらね。確かに存在していた筈なのに』
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