15



『おいっ!』


 どっちを取っても駄目なら


『あんた、早く答えなさいよっ!!』


 僕はどちらも取らない。


『一人暮らし、するよ』


 僕は、上手く笑えているのだろうか。
 迷惑をかけないようにと努力してきた勉強も。
 疎まれないようにとしてきた作り笑いも、愛想も。
 全て、全て無駄だったのだと気づいた。
 そのときにはもう遅くて、もう全てが終わっていて。
 声は震えていなかっただろうか。
 どうやったら、どうしていたら良かったの?どうしていたら、正解だったの…?


 気がついたら一人、新しい家となるこのマンションの前で立ち尽くしていた。
 頭に浮かぶのは、いつだったか呟いた母親の言葉。また今よりも随分マシだった頃の、呟き。


『―――愛って何かしらね。確かに存在していた筈なのに』

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