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 いつのまにかもう家の前まで来ていたみたい。僕の家は家ってゆーよりもマンションの一室だけどね。しかも高級マンションなのよー。
 え、何でって?それはね、海より深い訳があるのだよ諸君。何キャラって?知らなーい。ま、ただ単に親が金持ちだっただけなんだけどね。


「ただいまー」


 ガチャリと音を立ててドアノブを回し開ける。広い玄関に響くのは自分の声だけ。一人暮らしなのだから返事が返ってこないのは当然なのだけど。それ故に―――嫌なことを、思い出す。


『      』
「…っ」


 血が滲むほど唇を噛み、堪える。数秒なのか、数分なのか分からない、だけれども自分にとっては恐ろしく長い時間に感じられた。そっと息を吐き出し、鞄も玄関に放り投げてバスルームへと向かった。冷水のままのシャワーを浴びる。
 いつもならそれで大体気は晴れるのだが、今回はそうもいかないらしい。グニャリと歪む視界に必死で耐えた。キュっと音をたてシャワーの栓を閉め、バスルームを出た。ある程度体を拭き、タンクトップを着る。鏡に映るのは無表情な、自分の顔。見るからに青白い自分に、ふ…と苦笑してそのままベッドへと直行した。
 柔らかな布団に自分の身体が沈みこむのを感じる。重い瞼は重力に逆らわず静かに下りた。

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