「椿が大丈夫なら、いっか」
「うん」
深くは追わない。そんなところが好き。隠れてふふっと笑う。
「それにしてもさ、その人のことかなり気に入ったみたいだな」
「え」
どこが?
「だって名前覚えてるじゃん」
「あ」
「気付いてなかったのか?」
呆れたようにそう言われる。ほんとだ、名前で呼んでた。
「ちょっと、悔しい」
「?」
「ううん、何でもない」
首を傾げて促すが、それ以上は何も言う気はないらしく頭を振っただけだった。
「さて、帰ろうか」
「うん」
聞いてほしくないようだから僕もスルーすることにした。
(ごめんね、)
決して言えない言葉を、僕は飲み込む。
「今日もご飯持っていくなー」
「え」
「えって何。ちゃんと食べなさい」
「…つーん」
「口で言っても可愛くありません。そのうち餓死するよ?」
「ちっ」
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