37 変×1



「…俺、何してんだろ」


 あの後がむしゃらに走り続けて、気付けば森の中にいた。学園の裏にある森だとは思うんだけど、なにしろ深い所まで来てしまった為自分の位置がサッパリ分からない。
 どうしよう。息を整えながら途方に暮れた俺はそこにあった大木に背中を預けて座り込んだ。
 俺ってば馬鹿だよなぁ。何で今まで気付かなかったんだろう。確かに両親とも美形で兄貴も美形で俺だけ平凡だったんだから、普通は疑うはずだ。
 それでも愛されている実感があったから思い込んでしまった。兄貴と思っていた人、両親と思っていた人と赤の他人だって今更言われたって、俺はどうしたら良いのか分からない。分かる訳がない。


「間抜けだなー」


 ハハッ。乾いた笑いが口から飛び出す。笑顔を作ろうとして失敗した俺の顔は、さぞかし不可解な表情になっている事だろう。自然と泣けてきて、重力に従って垂れてきた鼻水をずずっとすすった。


「何が間抜けなんだ」
「そりゃあ俺に決まっ…誰?」


 目を丸くして俺を見下ろしてくる人物を見る。大柄でなかなかいかつい顔をしていて、だけど目は優しい。何か、


「くまさんみたい」

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