ごちゃごちゃ | ナノ


▼ 盲目の愛

 少年の世界が比喩ではなく真っ暗になったのは、小学4年生の時だった。まだまだやんちゃ盛りな彼は、女の子に目もくれず男の子とばかり遊んでいた。どこにでもいるようなふつうの男の子だった。特に秀でたところはないが、リーダーシップがあったのかいつも男の子に囲まれて遊んでいたような、そんな、ふつうの男の子。
 ある日、公園でいつも通り男の子たちと遊んで、いつも通り暗くなってきたからと解散した帰路。遊び道具のサッカーボールは、いつも少年が持ってきていたため、帰りも腕に抱えていた。そのサッカーボールは誕生日に父親に買ってもらったもので、とてもとても大切なもの。少年にとっては宝物だった。
 今にも駆け出しそうな上機嫌で足を踏み出した。...はずだった。後ろから脇を持たれて、何かに抱き上げられた。足は、何もない空間を蹴っていた。大切なサッカーボールが、少年の腕からこぼれ落ちた。

「ーーーぇ」

 犯人は、一週間後捕まった。意識が朦朧とするまで殴られ、蹴られ、指先が1ミリとも動かなくなった少年を性的に犯した。犯されながら少年は世界に絶望した。願ったって神様は助けてくれやしない。世の中にヒーローなんていない。なぜ、助けてくれないんだ。ぼくが悪い子だから?ぼくは要らないの?捨てられたの?

「(何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何でなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ)」




























 助け出された少年は見るに堪えないほどの怪我と男の液体に塗れていた。押し入った警察が後ずさるような悲惨な状態であったという。死んだようにピクリとも動かない少年は、もうその時既に壊れていた。
 ぼんやりと虚空を見上げて、それでいて少年の目の焦点は合わない。自分から食物を食べようとしない。喋ることも、感情を表すことも、表情すらも失った。
 そんな彼に、母親は泣き崩れた。最初こそ泣く母親を慰めていた父親も、徐々に離れていった。母は泣き狂った。離婚の調印を押す父と母を横目に、少年は変わらず虚空を見つめていた。

 家庭は、崩壊した。

 父親は妻と子を置き去りにして違う女に走った。母は少年を引き取ったものの、光と感情と表情を失った我が子を見る度に精神を崩壊させていった。少年は壊れていく母親を見ることも触ることも出来なかった。なんの気力も持たず、なぜ生きているのか分からなかった。
 事件が起こった僅か2年後、母親は自殺した。聴力は残っていた少年は事の次第を警察の口から教えてもらった。何も言えず、ただ"そうですか"と一言だけ発したが、それ以降口をつぐんだ。






*暗い話が書きたくなったけど挫折。このあとドッロドロに甘やかされて依存させられるといいな。

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