▼ 006
【あらあら、この子がかい?】
オヴェロンとカイとの間に割り込んできたのは、勝気そうな瞳が印象的な美女。銀色の髪を煌めかせて彼女は笑んだ。
【私はティターニア。オヴェロンの番だよ】
「僕は七色海です」
ティターニアに名乗られてカイも挨拶を交わす。海は精霊王と精霊王妃を見比べて、もしかして凄い人と話しているのではないのかと首を傾げた。
【純粋そうな、優しそうな子だね。海の望みならどこまでもゆくよ。これを渡そう】
ティターニアは自身の指につけていた指輪を抜き、カイの右手の人差し指へとその指輪をはめ込んだ。その指輪には銀色の薔薇が咲き誇っている。カイはキョトリとそれを甘受していたが、明らかに高価であることに気付いて抗議しようとする。
「こんなもの貰えません!」
【おや、これは契約の一種だから構わないのだよ。むしろ貰ってくれないと私が困る】
「でも」
渋るカイにとどめを刺した。
【それにもう外せないだろうしね。諦めなさい】
【ついでに私のも、な】
オヴェロンは隙を与えずに素早く海の右手の親指へと指輪をはめ込んだ。金色に輝く王冠の指輪を見てカイは焦る。外そうと試みるが外れそうにもない。これは一体どういう仕組みなのだ。
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