予測不可能物語 | ナノ


▼ 005

【わしは地の精ノームじゃ。精霊の愛し子よ】
「セイレイノイトシゴ?」


 いきなり聞き慣れない言葉が飛び出したことに驚く。話の流れからいって、自分のことを示していることはかろうじて分かるのだが、その意図は分からない。
 まるで、自分が何者なのかを知っているかのような口ぶりだ。ひょっとして、どうしてこの世界に来たのかを知っているのではないか。


【それはだな】
【それについては私が教えよう】
【王!?】


 ノームの言葉を誰かが遮った瞬間、ざわりと精霊たちの間の空気が揺れた。次いで現れたのは恐ろしく美しい青年だった。金髪碧眼でまさしく王子様といった風情の男。


【初めまして。そしてようこそ、この世界へ】


 彼の言い方に期待が膨らむ。やはり何かを知っているのではないだろうか。


「この世界、ということは僕がここにいることについて何か知っているんですか?」
【いや。ただ、そなたがこの世界に馴染んでおらぬことが分かるだけなのだ】
「そう、ですか」
【期待に応えられずすまないな】


 彼の言葉にあからさまに肩を落とすカイ。青年は眉を下げて詫びた。何も彼が謝るようなことではないので慌てて首を横に振る。


【異界から来た者よ。私はそなたを歓迎しよう】


 そう言ってオヴェロンは柔らかく笑んだ。


【精霊に愛し子の意味、だったか。精霊は気性が荒い奴が多くてな、あまり人間には寄らないのだ。しかし貴方のように柔らかい魂を持つ者には心を許す。そして精霊に愛し子とは、全ての精霊に好かれる人間のことを言う。まあ滅多におらぬがな。私もここ数千年見ておらぬ。この目で見るのは久しい】
「そうなのですか」


 未だに擦り寄ってくるペガサスを撫でながら、気性が荒いとは考えられないな、とカイは不思議そうにオヴェロンの話を聞いていた。


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