いつしか | ナノ


▼ 2つ

「サボりに行ってきまーす」
「堂々とサボり宣言か。別に良いが」
「良いんかい!」
「友人Aクン、ナイスつっこみー」
「椿はそろそろ名前覚えようぜ!?」


 ポンポンとテンポの良いやり取りに、クラスメイトは笑う。このやり取りは別段珍しくもなく、かなりの頻度で起きるためクラスメイトも適度に笑って受け流している。ただの漫才だと思えばさほど気にならない。
 そんな漫才扱いされているツッコミ役の少年は、高校男子にしては可愛らしい大きな目をクリクリさせて椿を睨む。その一方でゆるーんとした喋り方をする椿は、勝手に立ち上がってキャンキャンと吠える少年のことなどお構いなしに席に座って緩く笑っている。


「まぁ覚える気なんて更々ないけどね」
「酷いっ!」
「せんせー行ってくるぅ」
「おう。その前にこの問題解いてけ」
「えー、めんどいからそこのモブAクンに解いてもらってぇ」
「友人AからモブAに格下げ!?」
「じゃあそこのモブA、これの答えは?」
「先生までッ」


 椿は吠えるチワワに丸投げして机の横に掛けていたぺったんこの鞄を持ってスタスタと歩き出す。これもまたいつものことなのでクラスメイトが気にすることもない。教室の後ろ側のドアの凹みに手を置くと、うーんうーんと唸って教科書を睨む少年がとんちんかんな答えを言い出した。


「えーっとぉ、4…?」
「全然違ぇよ」


 かすってすらいない答えにドッと教室が笑いの渦に包まれる。椿も肩を震わせて笑う。この友人はまったく、と笑いすぎで潤んだ目をこすった。


「モブAクンはお馬鹿サンだねぇ。それは10分の3ルート5だよ」
「おし、天才クン正解。行っていいぞ」
「うぃーっす」
「モブ馬鹿F、これ前に出て解け」
「なんか馬鹿って増えてるしAからFになってるし!そして分かりませんっ!!」


 閉めた教室のドアの中から担任に対する激しいつっこみの声とクラスメイトの笑い声が聞こえる。今日も平和だ、と笑いを噛み殺した。


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