いつしか | ナノ


▼ 8つ

「コンクリートの上に寝ると痛くなるだろう?」
「…まぁ」


 それもそうか、ととりあえずは納得する。


「せんぱーい?」
「次はなんだ」
「手退けてくれない?」
「お前髪サラサラだな」
「会話になってないよー」


 椿は嘆く。劉牙に頭を撫でられて、なかなか起き上がることが出来ない。本当に嫌なら振り払えるのだが、そういうわけでもないのでますます困った。


「せんぱーい、起きたいんだけどなー」
「嫌だ」
「即答デスカ」
「何か離したくねぇ」
「なぜに」


 思わず真顔になった椿に返答することなく目を細めて更に撫でる。離してくれそうにない。椿は諦めて息を吐き出した。


「今何時?」
「丁度放課後になったとこだ」
「えぇ!?結構寝たなぁ」


 2時間も寝ていたことに驚く。チャイムが鳴ったことにすら気付かないということは随分熟睡していたようだ。


「先輩足痺れてるんじゃないの?」
「まだ大丈夫だ」
「まだってなに、まだって」


 少しは痺れてるんじゃないか。まだ頭の上にある手を掴んでそのまま起き上がる。
 手、大きい。椿はまじまじと掴んだ手を見つめる。自分の手は全体的に華奢で細い手首は頼りない。対して劉牙の手は男らしいゴツゴツとしたものだ。同じ男として羨ましい。


「白露?」


 不思議そうに見てくる先輩に我に返って、笑いかけた。

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