いつしか | ナノ


▼ 7つ

 サラリ、と髪を撫でられる感覚に椿はふと目を開く。寝起き独特のぼやけた意識と視界に飲み込まれる。体を包んだ風が少し肌寒く、近くにあった温もりに無意識のうちに擦り寄った。丁度良い温度にほっとしていると上から声がかけられた。


「起きたか?」
「………?」


 聞きなれない声にぼんやりと目を開けて僅かに首を傾げる。


「寝惚けてるのか?」


 不意に離れた温もりを追う。キュっと手でとらえ、離さない。


「…白露?」


 困ったような声音にぼんやりと見上げる。見慣れない整った男の顔にようやく機能停止していた思考が動き始めた。


「ん、わたり、せんぱ…?」


 掠れた声で男の名前を呼ぶ。漸くこの状況を理解した。眠ってしまったのか、とぼんやりと霞がかった思考のままゆっくりと瞬きをする。

「おう、起きれたか?」
「ん」


 コクリと頷き、幾分スッキリした思考を巡らせた。段々とはっきりしてくる頭の中で1つクエスチョンマークが浮いた。


「先輩?」
「なんだ」
「あの、この状況はなんでしょー?」


 椿の状況。それは。


「膝枕?」
「そう、それですー」


 劉牙の膝の上に椿の頭が乗っている。俗に言う"膝枕"だ。下から見ても美形は美形だなとずれた考えが浮かんだ。

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