▼ 6つ
「勉強出来なさそうなのにな」
「先輩それ酷いからね、か・な・り!」
「人は見かけによらねぇってことか」
「そのとーり!」
胸を張って笑って見せる。しかし劉牙は心底意外だとでもいうような顔で椿を見る。
「ギャップってことでいいんじゃね」
「適当ですねー」
「まあまあ」
宥めるようにポンポンと頭を撫でてくる。それが子供扱いだと分かっていても、心地よさに振り払う気にはなれなかった。だがやはり少しは照れる。
「顔赤いぞ」
「そこはスルーするとこ」
「可愛いなお前」
劉牙が椿の髪をワシワシとかき混ぜる。乱暴な仕草に嫌な気持ちはしないけど、少し痛い。
「わたり先輩、痛い」
「悪い悪い」
「絶対悪く思ってないでしょー」
劉牙は潔く撫でる強さを緩めて今度は髪を梳くように優しく撫でてきた。気恥ずかしいが、先輩の手が自棄に気持ちよくてウトウトしてしまう。
「眠いのか?」
「んー」
「起こしてやるから寝てろ」
ぽんぽんとリズムよくたたいてくれる手に思いを馳せながら、椿は眠りの世界へと落ちていった。
いつも、嫌な夢を見る。
それなのにこの日は見なかった。
ゆっくりと穏やかな気持ちだった。
その意味に僕が気づくのは、
きっと、そう遠くない未来。
それなのにこの日は見なかった。
ゆっくりと穏やかな気持ちだった。
その意味に僕が気づくのは、
きっと、そう遠くない未来。
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