いつしか | ナノ


▼ 4つ

「お前飯は」
「んー?」


 単語を理解するのに少々時間がかかった。かつあげだかジャンプだかさせられるのだろうか、とのんびり考えていたから余計に。


「面倒なんでいいかなってー」
「朝は食べたのか」
「食べてませーん」


 素直に答えると、なぜか目の前の不良男子が眉間に皺を寄せた。目つきが更に悪くなって、造形が整っているから余計に怖さが際立つ。そんな顔をさせているのは自分だという自覚はあるもののどうしたら良いかわからずフイと視線を逸らした。


「朝昼晩三食しっかり食べろ。体力つかねぇだろうが」
「だって不良サマ、めんどいんですよー」
「面倒って…なんだその呼び方。俺か?」
「いえす」
「その呼称はやめろ。渡劉牙だ」
「わたり先輩?」
「あぁ。とりあえずお前こっち来い」
「アイアイサー」


 椿は素直に男の傍に寄った。普段から自由人である椿が命令を聞き入れることは少ない。あっさり従った自分を不思議に思いながら、この男にはどこか惹きつけられるものがあるからだろうかと検討をつけた。


「お前の名前は?」
「白露椿でーす」
「なら白露。俺の弁当分けてやるから食べろ」
「うええー」
「た、べ、ろ」
「…はぁい」


 劉牙にすごまれた少年は大人しく頷く。美形だから余計に迫力があり、思わず頷いてしまった。それにしても、と真向かいに座る男をちらりと盗み見る。
 よく知らない男の食事事情に口を挟むなんて、この不良男子はその外見に反してお節介なのだろうか。内心で”オカンか”とつっこんだ。自分につっこませるなんてなかなかやるなぁ、なんてズレたことを考えながら劉牙との会話を楽しむ。


「は?お前昨日は夜しか食べてないのか」
「うん。しかも無理やり食べさせられた」
「家族にか?」
「ううん。一人暮らしだから友人Aクンに」
「友人Aって」
「覚える気ないんだよねぇ名前」


 彼が呆れているのをひしひしと感じながらも椿はほのほのと笑う。色々な意味で改める気がないので痛い視線を受け流す。


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