いつしか | ナノ


▼ 3つ

「おっ、穴場はっけーん?」


 頭上に広がるのは青い空。煌々とした太陽が少々眩しく、椿は目を眇める。折角良い天気なのだから外が良いんじゃないかと探し回ってやってきたのは屋上。立ち入り禁止の札はドアの前にあったけれど、随分使ってないのかノブは錆びていて鍵の意味を果たしていなかった。あっさりドアが開いたのには少し驚いた。錆びついたギギギといった音が耳障りだが、なんとか後ろ手に閉めた。
 誰もいないようで、ホッとひと息つく。いつも行っていた中庭は新入生のヤンチャ組にとられてしまったので他の場所を探していたのだ。ここならあの不良たちも来ないようだし、次からサボる時は屋上に来よう、と決心。
 日蔭にあぐらをかいて座る。けっこう綺麗なんだな、とつぶやいた。鳥の糞が落ちているようなイメージがあったのだが、手で払えば座れるような小奇麗さだ。もしかしたら定期的に掃除しているのかもしれない。
 ぼんやりと流れる雲を見ていると聞き慣れたチャイムが鳴った。次は昼休みだ。


「んー、ご飯食べるの面倒くさいなー」


 朝ご飯も食べてない。昨日は夜だけチワワ少年に食べさせられた。お腹が空かないってことはないのだが、ご飯を食べるという欲求が薄いのかガツガツ食べることはない。小食なのと面倒なのが相まって相乗効果で食べる気がしない。拒食症…とまではいかないが、それに近い部類であることを椿は知っていた。知ってはいるが、直そうとはしない。なぜなら面倒だから。


「おい」


 昨日の夜もいらないと言っているのに、あのチワワがキャンキャン吠えるから仕方なく胃袋に詰め込んだ。椿にとってそれは食事という名の作業である。無理やり食べさせられて吐くかと思った。意地でも吐かなかった自分を褒めてほしいものだ。


「おい」
「ん?」


 声をかけられていたことに気づいて振り向けば、シルバーの髪をした男子生徒がいた。ワックスでつんつんに立てた髪の間からのぞく耳には大量のピアス。かろうじて拡張はしていないものの、軟骨に刺さっているピアスは痛そうだ、などとぼんやりと思った。
 不良は、苦手だ。こちらに興味など欠片も存在しないのに勝手に視界に入れて絡んでくるのが至極面倒臭い。だからいつもは避けるのだがこの男はカッコイイな、と素直に思った。目つきが鋭く、その上三白眼であることを差し引いても、かなりの美男子である。すらりとした肢体は適度な筋肉がついていて、ヒョウやチーターを彷彿とさせる。


prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -