▼ 013
「…ッきゃああああ!!」
街中であがった突然の女性の悲鳴。一体どうしたのかと目を向ければ魔物、ヒッポグリフ(鷹の上半身に馬の下半身を持つ魔物)が居た。どうしてこんなところに、と思う間も無くマイコは今にも襲われそうな女性に結界を張る。
「リストレイント(拘束)!」
ヒッポグリフの足が動けないようにする。しかし数十秒しか持続しないので、ただの時間稼ぎにしかならない。今の内に女性を初め、周囲の人々を避難させなければいけない。女性は腰を抜かせてとてもじゃないが動けそうにない。マイコは舌打ちしそうになるのを寸前で堪え、女性を魔法で浮かせて遠くへと追いやった。
「フィールド・ディプロイメント(展開)」
ここは王都のど真ん中だ。人々だけでなく建物も壊さないようにした方が良い。彼女は咄嗟にそう考えて被害が拡大しないように、充分な広さのあるドーム型の結界を張る。これならばヒッポグリフは外に出られないし、物理的攻撃も魔法攻撃も遮ってくれる。準備は整った。
マイコは静かに敵を見る。ヒッポグリフも丁度魔法が解け、羽根を広げて威嚇しているところだ。先に動いたのは、向こう。
『ギャアアアッ』ガガガッ
「シールド!アクアゲイザー」
襲いかかってきたヒッポグリフを間一髪で跳ね返し、水流を発射し攻撃する。しかし簡単には行かず、相手はひらりとそれを避けた。思っていたよりも知能が高いらしい。久々の好敵手に知らず知らず口角を上げていた。
「ロックグレイブ!」
次は先制攻撃を仕掛ける。足元から鋭利な岩石を突き出させるが、逸早くヒッポグリフは羽根を広げて飛んだ。地系は効かないようだ、とマイコは学習する。飛び上がったヒッポグリフは空中で体勢を立て直し、口から氷の息を吐き出す。後方に下がってなんとか逃れるが、掠った左手が凍ってしまった。
「リカバー」
右手を患部に翳し、氷を溶かす。だがその間に隙が出来てしまい、体当たりを防御出来なかった。
「ッ」
床に体を打ち付け低く呻くと、上にヒッポグリフが飛びかかってきた。マイコは転がって立ち上がる。
相手に地系魔法は効かない。下からが無理なら、上から攻撃すれば良い。頭の回路を巡らせてそう結論付けたマイコは両手を空に向かって突き出した。
「…ッライトニングバースト!!」
巨大な雷が、ヒッポグリフに命中した。脳天からぶち抜かれたヒッポグリフは鳴き声を上げる間も無く真っ黒焦げになって地面に落ちた。既に息はもう無い。
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