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▼ #4

 ゴールデンウィーク。もちろん学生であるオレも先輩も休みだ。俺の家は連休中は空っぽ。両親が夫婦水入らずのデートという名の旅行に行ったからだ。3泊4日。オレはひとり残される。家事は全部出来るというかいつもやっているから親も心配はしていないのだろう。
 そしてオレは、ドキドキとスマホの画面を見ていた。どうしよう。送信してしまおうか。してしまえば、もう後戻りは出来ない。



















「…っ、」


 色んな感情が混じってクッションに顔を埋めた。先月先輩が雄の顔をして言ったあの言葉が頭の中をぐるぐると巡る。


"俺はいつだって食べたいよ?"
"大丈夫、ちゃんと待つよ"


 その時は助かったと思ったことが、今になって逆の感情が浮かんでしまった。先輩がオレのことをそういう目で見ていると理解して、オレなりに悩んだ。本当に先輩とそういうことが出来るのかどうか、頭が痛くなるくらい、夢に出るくらい、悩んだ。
 でも、単純に。そう、単純に、先輩に触れてみたいと思ったんだ。だから、出来なかったら、体が拒絶してしまったら、その時に考えようって決めた。覚悟した。それなのに。
 "ちゃんと待つ"だなんて、それはつまり、オレが行動を起こさない限り先輩は何もしないということだ。いや、もちろんオレのことを考えてくれての言葉だとわかってはいるが、覚悟をした俺にとっては高い壁になってしまった。
 どのタイミングで言うかどうか悩んでいたオレにとって、両親の旅行は良い口実だと思った。男同士でラブホなんて行く度胸などあるわけがなく、もしそういうことをするのならオレか先輩の家になる。流石に先輩の家に行っていいですか、なんて恥ずかしくて言えそうになかったので助かった。
 けれど恥ずかしいものは恥ずかしい。あの出来事があった上でオレから誘うということは、つまり、そういうことなのだ。先輩は聡いから全部わかった上で返事をしてくるのだろう。断られるということがあるはずもない。だって、先輩だ。それなりに学生にしては長い間恋人という立場で隣にいたオレにはわかる。嬉々としてあの人はYESと言うのだろう。ああ、そうやって察してしまうのすら恥ずかしい。オレの中にはもうあの人が住んでいて離れてくれやしないのだ。


ヴヴッ


「!」


 バイブ音の鳴ったスマホを恐る恐る見る。ああ、もう、ほんとに恥ずかしい。でもうれしいだなんて。オレってば。

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