アストロノート | ナノ


▼ 007

「かしこまりました、登録ということでよろしいですね?こちらで発行しましたギルドカードは身分証明書としてもお使いいただけます」
「はい、お願いします」
「それではこちらの書類にご記入ください」


 またしてもナートの中のギルドのイメージが壊れていく。水晶に触ってピカッと光るだとか血を垂らせば登録完了的なものだと思っていたのだが。
 受付嬢が差し出した石のようなものを不思議に思いながら受け取ると、何の変哲もない灰色だった石が白く点滅した。あ、これはファンタジーだ。


「犯罪歴は無しですね」
「これって犯罪歴がある場合は、」
「黒く点滅します。まあそれだけしか調べられない魔道具なので、グレーなところも白く光ってしまい当てにならない時もありますが」


 へぇ、と相槌を打つ。書類と一緒に渡された羽ペンを持ち記入欄を埋めていく。名前、年齢、職業のところを書いて、生まれた場所という欄でペンを止める。

「生まれ故郷が無い場合はどのように書けば良いですか?」
「空欄で大丈夫ですよ。育った場所がございましたらその下の欄に書いてください」


 頷いてアメナ村と記入する。その下に養育者の欄には老婆の名前を書き込み、書類を受付嬢に渡した。
 彼女はおもむろにその書類の上にピラミッド型の紫色の石を置いた。またファンタジーなことが起こるのかと身構えたナートを置き去りにしたまま彼女はあっさりといつの間にか出来ていたらしいカードをナートに差し出す。


「こちらの魔道具は嘘か本当かを見分けて、真実が書かれていれば対になっている魔道具から新しいギルドカードに、紙から対象者の魔力の波動を読み取り記録します」
「いきなり高度になりましたね…」
「こちらは特注品ですのでとても高いんですよ」


 不思議そうな顔をしていたナートに気づいて受付嬢が説明してくれた。なかなかややこしそうだ。ちなみに幾らするのか聞いてみると国土の半分を買えるくらいです、と返されてなんとも言えない表情になった。漠然としすぎてわからん。
 とりあえず受け取ったギルドカードは鞄に入れた。見た感じはつるりとした質感で、鈍色をしている。名前だけが記されていてそれ以外は特になかった。


「カードはランクによって色が変わります。ナート様は現在Fランクです。なお、最低でも半年に一度は依頼を受けていただかないとカード剥奪となってしまうのでご注意ください。…ナート様は、薬師なんですね。早速ですが、ギルドから名指しで依頼させていただいても?」


 ナートが頷くのを見届けて、受付嬢は話し出した。なんでも、この時期になるとポイズンモスというモンスターが大量発生するのだという。子供でも倒せるほどの弱さなので問題がないように思えるのだが、毒を持っていることが厄介で、刺されてから1週間で死に至るほどの致死毒らしい。
 もちろん解毒剤があれば後遺症もなく回復するが、その解毒剤を作る薬師がこの街に1人しかいない。ナートにはその薬師の手伝いをしてほしいという。その働きによって報酬を決めると言われ、ナートは断る理由も特にないため了承した。

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