アストロノート | ナノ


▼ 006

 しかし、物価が思っていたより安い。ナートは魔法のかかった鞄を撫でた。山の中で生活していた時はお金など使うことがなかったのだ。
 村は本当に集落と言った方が良いような規模で、お金は流通していなかった。物々交換で事が足りていたために何も考えず老婆に渡されたものをそのままごっそり鞄に入れていたのだが。
 おじさまに物価を聞いてびっくりした。こちらの世界でのお金の単位はセルと言い、パンが1つ10セルから20セルくらい。外食しようと思うと100セルあればおつりがくるのだそう。
 1セル=約10円だと考えれば良いのだろう。1セル=銅貨1枚、50セル=小銀貨1枚、100セル=銀貨1枚、1000セル=小金貨1枚、10000セル=金貨1枚、100000セル=晶貨1枚。金貨や晶貨は滅多に使わないため、貴族街でなければ換金場で換金しておいた方が良いとのこと。
 ちなみに、おじさまは商人ゆえに金貨も晶貨も持っているのだと、話してるうちにナートがとんでもない田舎者であると気づいたおじさまが実物を見せてくれた。
 ここまで理解してナートが顔を若干引きつらせた理由は単純明快、老婆に持たされたお金がとんでもない額だったことに気づいたからである。
 詳しくはわからないが、財布代わりの革袋の中に晶貨がぎっしり詰まっていたことは覚えている。晶貨1枚を日本円に換算すると100万円。内心でひいっと声をあげたのはおじさまにはないしょである。敏いおじさまのことだからバレていたかもしれないが。
 ギルドに行ったらすぐにでも宿をとって今どれくらいの金額を持っているか確かめないと。ナートは無意識のうちに足を早めた。そんな大金を持っていると知れば落ち着かなくなるのは当然だった。


「いらっしゃいませ」


 想像していたような粗暴な雰囲気はどこかに置き去りにしたような、銀行を彷彿とさせる内装がこのギルド組合。受付嬢がにっこり微笑んでナートを出迎えた。
 ナートは感心しながらカウンターへ行き、証明書を発行してほしいのですが、と声をかけた。

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