07 サイテーな親



 時は過ぎ、先日私ことエミリエンヌ=M=フェリシテは5歳になった。時折舌が回りきらないこともあるけど、滞りなく意志の疎通が出来るようになって嬉しい。


「ジジ、きょうのよていはなに?」
「午前は魔法、午後は作法の勉強でございます」


 ジジさんは相変わらずの美人っぷりで、5年経ってもその美しさに衰えは見られない。この容姿で四捨五入したら40歳だなんて信じられない。女としては(今は幼児だけど)是非その美貌の維持の仕方を教えていただきたい。
 ジジさんを呼び捨てにしているのは、「格下に敬称をつけてはいけません」というジジさん直々の教育によるものだ。それでも元日本人としては心苦しいから、頭の中ではさん付けなんだけどね。


「まほうがくがさき?」
「さようでございます」


 ジジさんは肯定して綺麗に結った銀髪をきらめかせて微笑んだ。べっぴんさんの笑顔は心臓に悪い。あ、そういや私はアメジストの色彩を持ち合わせていなかった。白だった。…白髪じゃないからね?ホワイトパールの髪に金と黒のオッドアイ。なんてファンタジックな容姿なのでしょう!ジジさんのような銀髪とは全く別物であるこの髪は、例えるのなら雪のようなまっさらな白。そこで問題なのは、アミラでは白を持つ者は存在しないらしいのだ。どうやら、年老いても髪色が白くなることもないらしい。由々しき事態だ。これでは目立つどころの話じゃない。オッドアイもまたいないわけではないが限りなくゼロに近いようだ。
 相も変わらずここには鏡がないが、水面に映せば鏡代わりになる。水面で自分の顔を確かめてものすごく驚いた。まさに母親と瓜二つだったのだ。確かに髪と目の色は違うが、顔の造形はまさにそのままカラーコピーしたかのようだった。


prev next

 



top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -