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「こればっかりは当主様ではなく奥様に似て良かったですねぇ、エミリエンヌ様」


 ………………ちょっと待って。その言葉から判断するに、父はよろしくない御顔を持っているということだよね。なんていうか、会ったことのない人だけど、実父が遠回しにブサイクだと言われるのって結構複雑だ。それは置いておくとして、私はあのべっぴんな母似なのか。ブサイクよりは可愛い方がいいよね。前世と違う顔っていうのは違和感があるだろうけど今は素直に喜んでおこう。精神衛生上良くないし。
 ところで話は脱線するけど、この世界アミラはとても色彩が豊かである。地球ではせいぜい金髪、赤髪、茶髪、黒髪くらいだ。目もそれほど色があるわけじゃない。染めたりカラーコンタクトをぶっ込むのなら話は別だけど。でも、アミラでは目がチカチカするほど極彩色が溢れている。アナベラさんは、私にとって馴染み深いダークブラウンの髪と目をしているが、ジジさんは銀髪碧眼、イネスさんはサーモンピンクの髪にまるで兎のようなルビーの目を持っている。初めて見た時はそりゃあもう驚いた。そして当然泣いた。一体毛根はどうなっているんだろうね。
 そして今日会った私の母らしき女性は、アメジストの髪と目をしていてとても神秘的な容貌をしていた。日本では昔、紫は高貴の色とされていたらしいけどそれもあながち間違いじゃない気がする。だってあの人、すっごく上品な雰囲気醸し出してたし。で、私が母似であるというのなら、私もそんな奇想天外な色を持っていたりするのだろうかとちょっとドキドキ。残念ながらこの屋敷で鏡を見たことがないため分からない。まだ生後一ヶ月だから髪が自分の視界に入るほど伸びるわけでもないし。どんな色しているのか、かなり気になる。まあ愛しの黒髪黒目ではないだろうなあ。まだ見ぬ実父がそんな色だったら有り得なくもないけど、確率は低そうだ。


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