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「なんでこんなにいっぱいあるの?」
「王城料理長に頼みましたら、あれもこれもとくださってこの量になってしまいました」


 ジジさんが苦笑しているところを見るに、恐らく押し切られたのだろう。甘いものはそりゃあ好きだけど、この量は流石に食べきれないよねえ。まあ焼き菓子なら多少日持ちはするだろうけども。ふむ、どうしようか。おすそ分けするにしても、私には友達と呼べる人はいないし(自分で言っておいてなんだか虚しい)、うーん。


「ジジ、イネス、いっしょにたべよ?」
「しかしエミリエンヌ様…」
「だってひとりじゃたべきれないもん。ね、いっしょにたべようよ」
「…そうですね、そう仰るのならお言葉に甘えて御一緒させていただきます」


 困惑顔のイネスさんに畳み掛けると、ジジさんがゴーサインを出した。すると途端にイネスさんの顔がパッと輝く。うんうん、こんなに美味しそうなんだもん、女の子なら誰でも食べたくなるよね。美味しいものは人と一緒に食べると美味しさ2倍なんだよ。
 いそいそと追加分の紅茶を淹れるイネスさんを、ジジさんは苦笑しながら見守る。外見は立派なレディなのに、中身はまるで少女のようでそのアンバランスさがまた可愛い。もし私が男として生まれていたのなら恋していたかもしれない。いやいや、ジジさんも大人の艶っぽさがまた良い。うん、悩むね。素敵なハーレムだわあ。
 なんてくだらないことを考えながら、このなんでもない平和な日常を大切に胸へと仕舞った。

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