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「きょうはイネスがいれたの?」
「はい。よくお分かりになりましたね」
「えへへー」


 にっこり笑えばイネスさんも同じように笑う。
 前世ではきっと、それほど紅茶に詳しくなかった。最初のうちは美味しいのか、そうでないのかくらいしか分からなかったけど、ほぼ毎日飲んでいると何の種類なのか分かるようになった。ついでに誰が淹れたのかも分かる。ジジさんは流石ベテラン、深みのある紅茶になる。対してイネスさんはジジさんに比べて深みは少ないがサッパリした紅茶になるのだ。しいて言えば、イネスさんが初々しい感じ。こんなこと、本人達にはもちろん言えないけれど。イネスさんは修業が足りないと落ち込むだけだと思うけど、ジジさんは遠回しに年齢のことを言われたと静かに怒るだろうし。怒ったジジさんは怖いのです。


「おいしいよ」
「ありがとうございます」


 お礼を言うのは私の方なんだけどなあ。まあ嬉しそうだからいっか。次はお待ちかねのお菓子だ!
 ビスコッティにスノーボール、クッキー、マフィン、マドレーヌ、フィナンシェまで。選り取りみどりではないか。…あれ、多くない?



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